「鑑定評価書のご説明⑩」「Ⅸ.鑑定評価額の決定の理由の要旨 〔Ⅰ〕価格形成要因の分析 2.地域分析_1」

今回は「鑑定評価書のご説明⑩」として「Ⅸ.鑑定評価額の決定の理由の要旨 〔Ⅰ〕価格形成要因の分析 2.地域分析」です。
【記載例】
Ⅸ.鑑定評価額の決定の理由の要旨
〔Ⅰ〕価格形成要因の分析
1.一般的要因の分析
・・・・・
2.地域分析
(1)対象不動産が所在する〇〇市の概況
①沿革・位置等
〇〇市は、〇〇県の県庁所在地で中核市に指定されている都市である。
・・・・
②人口
過去5年間における人口・世帯数の推移は次のとおりである。人口の微減と世帯分離による世帯数の微増が緩やかに進んでいる。
【人口動態の推移】
令和 3年4月1日現在 人口〇〇〇人 世帯数●●●世帯
令和 4年4月1日現在 人口〇〇〇人 世帯数●●●世帯
令和 5年4月1日現在 人口〇〇〇人 世帯数●●●世帯
令和 6年4月1日現在 人口〇〇〇人 世帯数●●●世帯
令和 7年4月1日現在 人口〇〇〇人 世帯数●●●世帯
③交通施設の状態
JR東海道本線「〇〇駅」が所在し・・・・
バス路線は・・・・・
④道路整備の状態
〇〇内の主要な道路交通網は、・・・・
⑤供給処理施設の整備状況
〇〇市は、昭和〇〇年には全域に上水道が整備された。下水は昭和〇〇年に下水処理場が処理を開始した。・・・・
(2)対象不動産に係る市場の特性
①同一需給圏の判定
対象不動産に係る需要者の立場からみて、代替競争等の関係にある不動産の存する範囲は、〇〇市北部の住宅地域であり、特に価格牽連性が強いのは、〇〇小学校及び●●小学校区内の住宅地域である。・・・・
②同一需給圏における市場参加者の属性及び行動
取引市場における典型的な市場参加者は、〇〇市及びその周辺地域に地縁性を有する個人であり、なかでも〇〇市及びその周辺市に勤務する住宅の一次取得者層の世帯が中心となる。これらは、居住の快適性及び利便性等に着目して取引価格及び条件等の不動産売買に関する意思決定を行う。・・・
③市場の需給動向
〇〇市北部における公共交通機関はバスに限られることから、・・・・・・・、商業施設等の接近性などの利便性が良好で住宅の需給関係は比較的安定している。
④代替、競争等の関係にある不動産と比較した対象不動産の優劣及び競争力の程度
対象不動産は、先述のとおり利便性が良好で需給の安定している地域に存している。・・・・・・代替・競争等の関係にある不動産と比較した優劣及び競争力の程度は標準的である。
~~~~~~~~~~~~~~~~記載例ここまで~~~~~~~~~~~~~~~
【ご説明】
「鑑定評価額の決定の理由の要旨」ということで、今回は「地域分析」についてです。
地域分析とは不動産鑑定評価基準によると「地域分析とは、その対象不動産がどのような地域に存するか、その地域はどのような特性を有するか、また、対象不動産に係る市場はどのような特性を有するか、及びそれらの特性はその地域内の不動産の利用形態と価格形成について全般的にどのような影響力を持っているかを分析し、判定することをいう。」とされています。
不動産は「住宅地域」「商業地域」「工業地域」などでは、ある一定の範囲の地域ごとに利用形態がまとまっていて、不動産の価格もその地域ごとに応じて価格水準が形成されています。
ですので、その地域の特性が当該地域に存する不動産の利用形態に影響を与え、それがひいては個別の不動産の価格形成を左右するというメカニズムを十分検討するとともに、市場の特性が、不動産の利用形態と価格形成にどのように反映しているかを分析する必要があるのです。
これらのためにまずは鑑定評価の対象となる不動産が存する市町村の概況を明らかにするために「(1)対象不動産が存する〇〇市の概況」ということで
①沿革・位置等
②人口
③交通施設の状態
④道路整備の状態
⑤処理供給施設の状態
等について記述します。このほか対象不動産の種別に応じて、「商業施設の状態」「工業産出額など」「住宅着工の状態」等について記述していきます。
これらによって「地域の特性」を明らかにしていきます。
この「地域の特性」をベースにして「(2)対象不動産に係る市場の特性」を明確にしていきます。
対象不動産に係る市場の特性について不動産鑑定評価基準では次のように述べています。「地域分析における対象不動産に係る市場の特性の把握に当たっては、同一需給圏における市場参加者がどのような属性を有しており、どのような観点から不動産の利用形態を選択し、価格形成要因についての判断を行っているかを的確に把握することが重要である。あわせて同一需給圏における市場の需給動向を的確に把握する必要がある。」
これらを目的として
①同一需給圏の判定
同一需給圏は「一般に対象不動産と代替関係が成立して、その価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する圏域」と定義されており、不動産鑑定において調査すべき地理的範囲ということになります。
②同一需給圏における市場参加者の属性及び行動
その範囲内で市場参加者つまりその不動産を買うと想定される方について調べその結果を記述します。
③市場の需給動向
文字通り、価格が強含みか弱含みかなどの市場の状況です。
④代替、競争等の関係にある不動産と比較した対象不動産の優劣及び競争力の程度
その市場の中で対象不動産はどのぐらいのランクなのか、ということです。
以上によって不動産鑑定の手法を適用する前に行った情報収集の結果を記述していることになります。
以上