授乳(村田紗耶香)

 

 村田紗耶香さんの「授乳」。文庫の帯に「戦慄のデビュー作」と書いてある。村田さんは作家仲間から「クレイジー紗耶香」と呼ばれていて、芥川賞を受賞した「コンビニ人間」が全世界で100万部をこえるベストセラーになっている。なかなかのクレイジー小説ですが、なぜかこれが世界で「共感を集めて」いるらしく、それは私にとって驚きで。なぜなら、私にとって「コンビニ人間」は「素晴らしいけど全く共感できない小説」だったので。

 その村田さんの戦慄のデビュー作ということで、この文庫には「授乳」「コイビト」「御伽の部屋」の3作が収録されている。

「授乳」は帯にあるとおり「母が同い年のクラスメイトだったら、きっといじめてるな」ということで、母(ついでに父も)を嫌っている娘が主人公です。母が育児のためにする授乳とは少々異なる意味で使われている。「コンビニ人間」と同じく、普通じゃない感じを追求している。

 「コイビト」は、ぬいぐるみへの異常な愛をキーにした物語なのですが、読んでいると途中で「たしか授乳でもぬいぐるみに異常な愛情を抱いていたような気がするな」と思い出す。そう思って戻ってみると授乳でもミーミと名付けた猫のぬいぐるみへの愛情がわずかではあるが語られている。ここで「授乳」と「コイビト」の設定の対象性がなんとなく気になる。つまり「親を嫌うのか親に気に入られようとするのか」「結局親の庇護から逃れられないのか、それとも逃れようとはしているのか」まぁ、どちらにしても異常さを伴った娘時代を過ごしているのですけれど。

「御伽の部屋」について、今回は親子関係はひとまず置いておき、みんながそれぞれの「プレイ」を楽しんでいる。3つの物語には社会的な不適合があって、その中でそれぞれのやり方で生き延びようとしている。それが「共感」ということになるのだろうか。ついて行きづらい世界ではあるのだけれど、小説としては大変面白い世界だ。村田先生はおそらくこの方法を追求していくのだろうから、付き合ってみようと思う。よく考えたら、私が好きな谷崎潤一郎さんも異常な世界を追求しきった小説家だった。時代背景が違うからベクトルは少々違うけれど、異常さの追求は同じだ。

以上