鑑定評価書のご説明⑤ 鑑定評価の基本的事項_3 価格時点・価格の種類

今回は「鑑定評価書のご説明④」の「鑑定評価の基本的事項_2 鑑定評価の条件」に引き続いて「鑑定評価の基本的事項_3 価格時点・価格の種類」を記載します。
【記載例】
Ⅲ.鑑定評価の基本的事項
3.価格時点
令和7年3月10日
4.価格の種類
正常価格
~~~~~~~~~~~~~~~~記載例ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~
【ご説明】
「3.価格時点」について
「価格時点」とは価格判定の基準となる日の事で、不動産の価格は時の経過によって変わっていくもので、土地は景気が良くなっていくとなんとなくそこにつられて上がっていきますし(企業が工場を新設、個人の住宅建築の意欲が高まる等々は景気が良くなっていく中で起こるわけです)逆も然り、建物は時がたつとだんだん悪くなってくるしデザインも陳腐化していってだんだん安くなっていくわけです。そういう訳で、価格判定の基準日を決めておく必要があるのです。
以前はそこまででもなかったように記憶しているのですが、近頃は実査(鑑定評価の対象である不動産の現場確認をすることをこう呼ぶ)の日を価格時点にすることが望ましいとされているらしく、どうも実査の日から1週間位ズレるのは望ましくないらしいのです。そんなに毎日ぐんぐん価格が流れるものかなぁ、という感じがありますが、なるべく、ということですからご協力をお願いします。
ところで、この価格時点にも種類がありまして1.現在2.過去3.未来の3つがあり得る訳です。1.現在は当然として、2.過去というものもあり得るわけでこの場合は「対象不動産の確認が可能であり、かつ、鑑定評価に必要な要因資料及び事例資料の収集が可能な場合に限り行うことができる。」ということになっていて、何年も前でなければ頑張ればやれそうなものです。一方3.未来というのもあり得ますがこれは「すべて想定又は予測することとなり不確実にならざるを得ないので、原則として行うべきではない。」ということになっています。
「4.価格の種類」について
価格の種類は正常価格・限定価格・特定価格・特殊価格の4つがある、ということになっています。
正常価格は最も普通のもので、いわば世の中で取引されている価格、といっても中には特別な事情(どうしても欲しい、親戚が困っているから高く買ってやろう云々の事情です)の下で取引されているものもあるのですが、そういうものではなく「合理的な市場」と不動産鑑定士は呼んでいますが、まぁいわゆる相場の価格というものです。
限定価格とは、「隣の土地は倍出してでも買え。」という格言があるそうですが、つまり隣の土地と合併すると大きくなったり、間口が広がったりなどなどで自分の土地の価値も上がることが多いから「倍出してでも買え」となるわけです。この「隣の土地」といったような概念(それ以外のものもありますが長くなるので省略)の価格を限定価格と呼んでいます。何が限定かというと「市場が(あなたと隣の人に)限定されている」という訳です。つまりその市場限定で「倍出してでも」に妥当性がある訳です。
特定価格は「法令等による社会的要請」が背景にある価格つまりリートが買う目的であったり民事再生目的であったり何らかの法律の背景があるものです。これは残念ながら弱小の鑑定事務所ではあまりお目にかからず、大手事務所がやっていると思われます。
特殊価格は文化財など市場価値にはなじまないものの価格で、例えば文化財を現物出資して法人設立する、といったような時に必要となりますけど、これも弱小事務所ではあまりお目にかかったことがありません。
以上