同士少女よ敵を撃て(逢坂 冬馬)

2022年の本屋大賞&第9回高校生直木賞の受賞作だそうで、書店で大々的にプッシュされていました。「本屋大賞」はこれまで、あまり良いと感じた小説がなかったので敬して遠ざけていたのですが「成瀬は天下を取りに行く」がよかったので本作を買いました。しかし、カバーの記述を読んでみるとどうやら本作は戦争小説としてソ連が舞台になっているらしく、「この時期にソ連を舞台に戦争小説を書いて○〇大賞で浮かれているのか?!」と反感を覚えてしまい、少しの間読む気になれませんでした。。戦争小説はどうやっても反戦小説とならざるを得ず、今まさにロシアで戦争が進行中の中で舞台をそこに求める作者の態度が消化できなかったので。
ところが、あとがきのところで作者が「文庫化によせて」というタイトルでその思いを書いており、作者の胸の内に触れることができ、それは決して浮かれたものではないのだなと思われたので読んでみました。
結論を述べますと、レベルの高い小説ですのでもし私と同じ理由で遠ざけている方がおられれば、その反感は妥当しないので是非お読みになられるように、と申し上げたい。しかし、この小説が「名作」と言われるレベルであると評価されるにはもうちょっと長い年月が必要だ。つまり50年又は100年後の読者にもレベルの高い小説であると評価されなくてはならない。その場合、ウクライナ戦争を時期を同じくしていることは本作にとって大きなマイナスとなるだろう。でも、名作といえる小説はその時代背景との関連からは逃れられない。夏目漱石の小説は時代背景の考慮なしに評価はできない。それは当然である。現代の世情に合わせて読んでみてもたいして響くものじゃない。本作もそれは同様。そのうえでの評価を得なければ名作ではない。(逆に言うと、ウクライナ戦争と同時代でなければ名作の条件を多く備えているということです。)
ところで、この小説に与えられた文学賞の受賞理由などを見ると残念なことにエンタメ性を評価する意見が多く、なんと「爽快な読後感」などというものまであった。一体全体どういう気持ちでこの本をお読みになられたのか、そういう方が小説を評価しうるのか、冒涜ではなかろうか。作者はよく辞退しなかったものだ。
以上

