地図と拳 (小川 哲)

 日経新聞の読書欄で「絶対に面白いことが分かっている小説と呼んでみないと面白いかどうかわからない小説。この二つでは後者を読んでしまう」と告白している小川先生の直木賞受賞作。最後に参考文献のリストがあってその量に圧倒される。200冊くらいあるだろうか。これだけの本に目を通すとすると私ならそれだけで3年近くを要する。この小説はいったいどれほどの力を込めて書かれたものなのか。

 この小説には多くの登場人物がおり、それが日本人以外に中国人であったりロシア人であったりします。さらに小さな章ごとに、語りが変わるので、これはどの人物だったかな?などがわからなくなって迷子になったりすることがあります。そういう方が多いのか集英社のHPに登場人物一覧、背景及び年表をまとめたペーパーがあるので使うと便利です。(https://www.bungei.shueisha.co.jp/shinkan/chizutokobushi/

 例えば「百年の孤独」では、同じ名前の人が沢山出てくるため迷子になりやすく、たしかあの本も新潮社のサイトにまとめのペーパーがあったし、光文社の「カラマーゾフの兄弟」では「しおり」に登場人物がまとめてあった。そういうのって、なかなか頼りになるのですよ。

 内容については、私が不用意にここで触れると興味を削ぐ可能性があるので触れないけれど、大づかみにまとめると日露戦争から太平洋戦争の時代の満州が舞台になっていて、建築とか都市計画もテーマになっているので私と同業の方の興味を誘うと思う。

 上記で紹介した集英社のサイトに「ぼくらの第二次世界大戦」という小川先生のコラムがあって、この小説は明確な反戦表明はないけれど、このコラムを読むとそこには反戦意図があるとわかる。生意気を承知で記載すると、そもそもすべからく戦争にかかわる文藝等は反戦にならなければ成立しないだろうと思うのですが、そうすると、昨今は宗教上の対立を契機とした戦争が多いけれども、教義が反戦を旨そしてあればよかったのにね、と感じますね。

 以上