瓦礫の死角(西村 賢太)

 

 西村 賢太先生の16番目の短編集。4篇が収められています。

①「瓦礫の死角」

 表題作。飲食店を斬首(クビになった)。母親の家に転がり込んで、煙たがられながら居座ります。曰く付きの父親の影におびえながら…

 西村先生の小説はここにストーリーを羅列してもさほど意味のあることではありません。その無謀・小心さ・不誠実さを独特のリズムで綴られている文体を実際に読んで楽しむほかないです。

②「病院裏に埋める」

 ①の母親の家を出て、カレー・焼きそば店に勤務しながら…

 エピソードとしては弱いものの、西村先生にとってはそれは大した問題ではない。そこを独自の感性で仕上げていくのが腕の見せ所だと思っていらっしゃる。しかもそれだけで十分に質の高い小説ができあがっている。

③四冊目の「根津権現裏」

 入れ込んでいる作家 藤沢清造先生の稀覯本入手に関するエピソード。

 エピソードとしてはまたまた弱い。でもそんなことはどうでもよい。西村先生にかかると一級の作品に。

④崩折れるにはまだ早い

 西村先生には珍しく弱気。それでも極上の短編が出来上がっている。

これらをあっという間に2回読んだ。

中学しか教育を受けていない先生がこれほどの小説を書くことが出来るのは、幼少時の読書好きのおかげなのだろう。(この短編集をはじめとして先生の小説を読めば、先生が時間があれば読書にいそしんでいたことがわかる。)

 

 幼少期の読書は日本語能力をあげる最も有力な方法だろう。多少の烏滸がましさを承知で私について申し上げると、「毎日小学生新聞」を2年生から5年生までとってもらっていて、それにはまってしまった。小学生時代は宿題すら満足にやっていないダメ児童でしたが、その後の時の流れでどうにか大学に行けたのは、この時の新聞購読が大変役立ったと思っています。小学生新聞は週刊だったので、「なぜ毎日来ないんだ、毎日新聞なのに。」と思いながら、穴が開くほど何回も読み返していました。

 西村先生が短命だったのも、先生の小説を読んでいると理由はわかる。食べる量と飲酒・喫煙なのだろう。でも、これらも先生を構成する要素だと思うから仕方のないことなのかもしれないね。

以上